2026年1月10日(土)16:45~18:00
対象作品:『熾掻~トロイアの男たち1868~』MICHInoX(作・演出:本田椋、出演:武長慧介、武者匠、本田椋、山口幸晟、原西忠佑)
*2016年から福岡、小倉、久留米などにおいて不定期に「シアターカフェ」を開催してきた。シアターカフェとは、観劇した後に有志の観客(10名程度)でお茶を飲みながら、見たばかりの作品について語るというものだ。作品の役者・劇作家・演出家が参加してくれることも多く、毎回かなりの盛り上がりを見せる。
*さて今回の作品は…。「短距離男道ミサイル」という男子校的ノリの(失礼)劇団名だった時代から、名前だけは聞いていた。その頃に見ることは叶わなかったけれど、今回「MICHInoX」の作品が見られ、そしてシアターカフェで皆さんと話すことができてつくづく良かったと思う。(私にはこの作品はもう少し咀嚼してから話したいところだったけれど、それはこれから考えていこうと思う)今回は特にツアー参戦のよそから来た方がお二人もいてその話も面白く、また出演者4人制作者1人が参加してくださって、笑いが絶えないとっても楽しい時間となった。いや~お芝居ってほんっとにいいですね!

一言ずつ…
いちよ:仙台で3,4回見て、今日はツアーの最初なんですけど、違う場所で見ると新鮮な気がして、微妙に違うところを探すのも楽しくて、何回見ても楽しめる作品だと思ってます。会津藩の話なんですけど、母方が、会津の前に敗れた二本松藩の出身なものですから、会津藩の話は微妙に歴史的にいろいろ思うことがあって、こちらの西の方の人は奥羽列列藩同盟そのもののことを知らないと聞いていますから、違う見方をするんじゃないかなと思って見ていました。…二本松藩は会津の前に落城してるんです。二本松少年隊は会津の白虎隊より年が若くて今の中学生くらいで闘っているので、死んだ祖父が「会津の白虎隊より若くて死んだのに…会津の人たちは宣伝がうまくて」と変な悔しがり方をしたのを子どもの時に聞いていますけど(笑)、宣伝のために白虎隊と名乗ったわけではなくて実務的な名前だったのだからと思いました。
ばらぞの:18年前に仙台にいたので原西さんだけ存じていましたし、知り合いが何人もMICHInoXのことをめちゃくちゃほめてて相当面白そうだなと思って期待してきました。昨日も見ました。昨日は無料だったので! 公演は…足音を立てないのと、息をハカハカしない。ハカハカするというのは東北弁で、息を「はぁはぁ」するってことなんです(笑)。
いちよ:ハカハカって東北弁だったんですか。
ばらぞの:そうじゃないと思ってたでしょ? 東北弁です(笑)。役者としてすごいなと思って見ました。『トロイアの女』も知らないし、戊辰戦争も知らないです、ウィキペディアをチェックしてくればよかったのにと思って見てました(笑)。

ます:宮城の出身で仙台で演劇活動をやっていた時期もあり、原西さんとはリーディング公演でご一緒させていただいたことがあります。小学校の頃には会津若松に修学旅行で行って白虎刀を買って次の日にポキンと…あれ結構折れやすいんで…泣いてしまったという(笑)。感想を言おうとしても今は「面白かった」「すごかった」しか言えないですけど、事前に考えていたことを言えば、東北って何回も侵略されてるんですよね、だけど日本の一部だ…そういう土地だったんだと。よく考えてみると自分が書いた戯曲は境界線、向こう側でもこっち側でもない、一部なのに敵とされたり敵なのに味方とされたりとか、そういう中途半端に置かれている土地だったな…と思って見に来たら、期待以上で。芝居で泣くことはあまりないんですけど最後泣いてしまって。すごく良かったです。

ゆみこ:演劇を見るばっかりだったんですけど、好きが高じて演劇フェスのサポートをやりだして、静岡の「ストレンジシード静岡」のサポーターをやった時に当時の「短距離男道ミサイル」が出てて、「すっごい真面目な人たちがすっごい真面目にバカなことをしている」というのがすごいなと。そのあと仙台の「せんだい卸町アートマルシェ」のサポートに行った時にも「ミサイル」がメインの出演者としてやっているのを見てから割と見ています。いつも本当にすごいなと思うのは、訳が分かんない、何を見せられてるんだろうモードからガラッとシリアスになる、シリアスにやってんなと思ったら急にガラッとわけわかんないモードになる、その切り分けの仕方が彼らならでは。見ている方としてはメンタルが上がったり下がったりして忙しいんですけど(笑)、それが面白いところかなと。私は東北にゆかりがなかったんですけれど、MICHInoXの作品を見始めて外側から「東北って確かにそういう立場に置かれてきた土地なんだ」と学ばせて頂いています。昨今のいやーな空気の中で今日の芝居を見て「やっぱ戦争をやっちゃいかん」と思いました。
テツ:劇場の設計をやっていて、毎回、舞台の空間構成がどうなっているかを楽しみにしています。今回も会場に入ってもうワクワク感が。テンションがマックスになりました。中心に舞台があってそれを取り囲む…しかも四方向、玄武と白虎と…とに分かれているという配置の仕方もワクワクするものがあって。初めから指定された席に座るということも運命づけられた感じがあって、世界への入り方というのも面白かったです。MICHInoXさんの作品は初めてですが、感情の波が激しくゆすぶられている感じがしましたし、ああいう舞台の構成なので観客と演者が入り混じっている、そういう意味で見ているというより体験しているというイメージを受けました。言葉の一つ一つが耳元で入ってくる、言葉の力がパワフルに入ってくる感じがしました。僕も東北、会津以北のことはあまり明るくないんですが、解説交じりで演劇を進められていたので何となくわかりましたし、自分が知っている戦争のこと、太平洋戦争もそうですが、そういうことと結び付けていくような心の動きも自分の中にありました。敗者の立場の語り方がどうあるべきだったんだろうということを考えました。

橋本(事務局):私も昨日と今日と2回拝見し…最初から飛ばして笑い泣き。笑っていいのかって思っちゃうけど迫ってくるじゃないですか、目を合わせて。だから笑うしかない。前半あんなに笑ったのに、赤べこかぶったままの状態でこんなに泣かせるんだ、すごく真面目なシーンなのに笑えるとか、感情が揺れ続けているような舞台でたくさんの人に見てもらいたいと事務局的には思いました。
――ここで出演者と制作者が登場…もう!?
ばらぞの:お風呂に入ってこられたんですか!? めっちゃいいにおいがする…!
一同:(笑)
柴山:半分セクハラに近い…(笑)。
武者 匠さん:たぶん、柔軟剤の匂いが…それがなかったらダントツで汗臭いと思うので…
ばらぞの:すみません、セクハラなんですね(笑)
武長慧介さん:本人がどう思うからですから…!
武者:めちゃめちゃ安心しました。

柴山:(笑)では再び始めますね。私の感想からです。笑って泣いて感情の浮き沈みが激しいお芝居だったのは皆さんがおっしゃったとおりです。脚本に関して言えば、気になるワードがいくつかあって。例えば、「会津の人の声を私はたった一文で潰してしまいました」だったかな、そんなセリフがあったと記憶していますが、何か一つの大きな立場の声が多くの様々な声が会津に限らずかき消されることあるよなとそれが印象に残りました。他にも、会津の力をそぐために何もない北の方に追いやるというセリフというかエピソードに、人の力をそぐには暴力的に殺すだけじゃなくて、知恵をつけさせない形で人間の力そのものを弱体化させる方法があるのかと、そしてそれでも立ち上がろうとしてきたのかと…聞きながら思うところがありました。全体的な話ではなく印象に残ったシーンやセリフのことで申し訳ないんですが。それと、「熾掻」なんですけど、ラストシーンで壁に人の名前や辞世の句が書いてあったということで、書き置くという意味での「おきがき」なんですか? タイトルの熾掻って、火を起こすための…
赤羽ひろみさん(制作):そうですそうです、暖炉とか火を焚いたりした時の道具ですね。
柴山:だから「ここから始まる」道具で、ただこの芝居は終わりの話で…いや戦争の終わりでそこから始まる話…とも言えるかと思い直して…だから「書き置く」ともかけた言葉なのかと思いました。
●境界線、資源供給地としての東北
柴山:ますさんが、境界線を越える話をされていたけれど、その話をもう一度よろしいですか。
ます:東北は何度も侵略を受けていて。こっちに暮らすようになって、仙台にあってこちらにはないもの…言語化できないけど感じていたんです。自分で戯曲を書く時、最近になって自分が割と心惹かれるのは境界線だったり境界線上に置かれている、こっち側にいるのにあっち側にされちゃったりとか、境界線の外側にいる人たちの都合で勝手に扱いが変わってしまうような状況だったり、自分がどこにいるのか分かんなくなったりとか、それがどういう風に働くのかに興味を持つ傾向があったんですね。今回、MICHInoXさんのあらすじを見たときに、東北って日本の中で広い境界線なんだと。境界線の扱いを受けてて、蝦夷ではないけど日本国内ではないと。仙台にいて見ていたいろんな芝居はどこかそんなものが練り込まれている気がしていて、こっちだとあまりそんな芝居とか表現に会うことがないことに気がついて。これはあくまでも私の勝手な感想なんですけど、今回の芝居は境界線の中でそれでも必死に生きようとする人たちの姿の物語として私は感じて、そこがものすごくよかったです。
柴山:確認なんですけど、ますさんがおっしゃってるのは、中央からも外れている、でも蝦夷のようなもっと辺境の地も離れている、中間ということ?
ます:はい。
柴山:日本という全体から見たときの境界線上にあるということでしょうか。
ます:例えば芝居の中での話で言うと、会津藩がもともと江戸幕府を守るために、京都を守るために力を貸したのに、結果的に周りの状況が変わったせいで、やってることは一緒だったはずなのに扱いが変わってしまった。会津藩が境界線にされてしまった。敵と味方の境界線に置かれてしまったための悲劇。物理的に言えば蝦夷と日本との境界線としても働いていたし。
柴山:軽く扱われている…辺境とされた…
ます:その割には日本の一部として扱われたというのがモヤモヤとするところで。
いちよ:中央と境界の地方の話、MICHInoXの前の作品『TSUNEKIYO X』でテーマにしていたなと思って話を聞いていました。
武長:ほんとにそうですね。僕たちは東北を題材にした歴史作品をやることが近年多くて、切り取る年代は違うんですけどそのモチーフは結構出てくるなと感じています。昔だと坂上田村麻呂と戦った東北の英雄阿弖流為がいたとか、奥州藤原氏がいたとか、自分たちの土地で自分たちの文化を立ち上げてきた人がいる中でも西の地方である中央官庁と絶妙な距離感で対立していたり、あるいは多賀城とかっていって中央から送り込まれた行政がそこを統治して地元と柔らかい関係を築いていたけど何かがほころんで支配する方向に行ったりするとか…敵と味方というのでは切り取れないけど、何か情勢がほころんだら容易にそこが変わってしまうというのが。北海道だと物理的に海が隔てるからそうできないけど、地面がなまじ続いているからこそ何とも言えない距離で東北ってやってきたんだろうなというのは僕たちも感じるところです。
柴山:利用されてきたり…何かによって今までの関係が手のひらを返したように変わっていくような経験を…してきたのが会津だったと。
武長:会津だったり、昔は岩手だったり、仙台も。それぞれにそういう歴史を持っているなと。
柴山:土地の場所が…利用価値があったとか、距離が良かったとか?
武長:奥州藤原氏の時代は馬が取れる時代だと脚本家が調べていて。
原西:あとは金。

ます:平安時代以降になると、米の生産が東北でもできるようになるので、米の生産だったり、あとは人。生まれた子どもを奴隷として…そういうことがあったそうです。資源供給地。
柴山:そうなんですね。…資源供給地…たまらないですね…。
ゆみこ:現在も、原発が。
柴山:そうですよね、私もそれは思いました。
ばらぞの:私は1998年から10年間仙台で演劇活動をしてたんですけど、お芝居を見てて、今回も楽しくやってるんですけど、どこかしら暗ーい。仙台のお芝居は暗い、暗い(笑)。
一同:(笑)
ばらぞの:こういうことかとやっとわかった! めちゃくちゃ暗いんですよ(笑)。
武者:でも我々の作品の近年のものと比べると確かに今回は暗い要素というか…若干シリアスな出来事が前面に押し出されてはいますね。
ばらぞの:いつも迫害、利用されて、くそぉ!というのがあったのかと勝手に納得してしまった。勝手に失礼ですね、でも根深いものがあると思いました。
ます:例えば東北の訛り…私が子どもの頃は、訛っている人は田舎者だと。東北人同士でも言い合って、私もさんざん言われたから標準語で喋るようになっていたら東北の訛りが言えなくなってしまった。でも同じ訛りでも大阪や福岡の訛りはキャラクターとして…
柴山:かわいいとか言われますもんね。
ます:その辺でも下に見られるというのがあるかと思います。
赤羽:逆パターンもあってそういうイメージがある分、むしろ悲しいだけじゃないよね、生き生きと生きているよね、というその行き来が大切にしているポイントかもしれないですね。
柴山:悲惨なものを背負っているだけじゃないという。
赤羽:そう。ラストシーンとかまさにそうだよね。むしろそこってカラッとした感じがあったりするよねと。
武長:生きててずっと「つらい、うらむ~」ってテンションではないですもんね(笑)。
ます:芝居で、楽しいと切ない・つらいがガンガン行ったり来たりしてジェットコースターに乗った感じで瞬く間にいくのが楽しかったですね。
●身体と動き
柴山:身体をめっちゃ使うじゃないですか。馬跳びをガンガンやっていくとか、人間縄跳び!(人間を縄に見立てて揺らされ、そこを別の人間が飛ぶ) ドキドキしながら見てましたけど、あれはすごかったですよね。
原西:あれは…作・演が動画で何か見てやってみたいと思ったんでしょうね。
一同:(笑)
武者:アフリカの子ども達とかが縄跳びで遊んでる…
原西:あれ、アフリカの方達とか上まで行くんですよ。本田君が一番出演者で軽量級なので本田君で色々試行錯誤したんですけど、一周はできなくて。
武者:無理だったね。
ばらぞの:重くて無理ということ?
原西:それもありますし、子どもの柔軟性がないと。
一同:しならないといけない、柔らかくないと…
ばらぞの:女の人だったら可能性はあるということ?
一同:いやいや…(笑)可能性はある? 二人で手を繋いで縄になる? いやいや…(笑)
ます:兵糧を運ぶシーンも大好きでした。
ばらぞの:本田さんがダダダダって小刻みで長時間…あれはどういうことなの? 人間がこれできるの?
一同:(笑)みな、うなずく
ばらぞの:あれ、どういう訓練したらできるようになる…?
一同:大笑い
武長:あれはねぇ、よく分からないんですよ(笑)。
赤羽:謎の訓練をやっているんですよ。あれは何か意図して…訓練してあれができるようになったというより、本人が好きな様々な訓練の結果、気づいたらやれるようになっていたという。
柴山:あんな動きって好きに任せてもらえるんですか?
武者:俺はだいぶ任せてもらってましたね。
武長:彼自身も俳優なので俳優の自主性を重んじるところはあるかもしれないですね。
柴山:あんな狭い中で。
ばらぞの:そう、照明にぶつからないかハラハラしてました。
柴山:先程ばらぞのさんがおっしゃってたのが、「ハカハカしない」。
ばらぞの:そう、全然ハカハカしない。
武者:いや、意外としてますよ。
ばらぞの:でも肩が全然はぁはぁしてない(ジェスチャー付き)。
ます:セリフが出ないということがない。
ばらぞの:普通にきれいな声で何言ってるか分からないことがない。
赤羽:ほんとですか!? (笑)
柴山:いや、後ろで着替えたり待機したりしてる時ははぁはぁ聞こえましたけど。
一同:(笑)
柴山:あと足音がしないと。
ばらぞの:全然しないわけじゃないけど、ダンッダンッて感じじゃない。つま先からかかとにキレイにつけてるんだろうと。歌った後も全然ハカハカしない。
柴山:ちなみに、九州では「ハカハカ」って言わないんですよ。
赤羽:言わない?
出演者:そうなんだ…
赤羽:でも長野県では言いますよ。
ゆみこ:関西では言いません。
原西:東日本の言葉かも…
赤羽:この辺に境界線があるかも(と、となりにいる柴山との間を指す)(笑)。
ばらぞの:ランニングとかさせられているんですか。
武者:させられてはいない(笑)。
赤羽:劇団の基礎トレーニングみたいなものはそんなにない。
原西:ああいうことになるというのは、もう、みんな承知してるので。耐えられないとまずいなという意識はみんな持っていて、それぞれの訓練はやってますけど。
赤羽:本人たちの課題が多分全然違っているので…筋肉を落ちたから付けた方がいいなという人、逆にシェイプした方がいい人、身体と喉のバランスをとるための筋肉をつけようという人…だから毎回これをやりますといった練習は実はない。
原西:本田がその辺の知識が豊富なので訓練や身体の使い方とかその辺は稽古でシェアしてくれるんですけど、それを基に我々が自分の体やパフォーマンスに合わせてチョイスしながら。って感じですよね?
武長:そんな気がしますよね!
武者:でもねぇ…みなさんが…その深い感想とか考察を話されてて…実はホッとしてるんですね。他の出演者がいるのに意識を向けられるのってホントに最後の…武長君がオリジナルの歌を詠む、萱野が切腹するところまで…私いろいろ担当しているものですから…
一同:ほぼ出ずっぱり
武者:筋肉ではない、これはと思って、これまでの人生で苦手だった長距離走を…12月の内に取り入れておいた方がいいなと思って。
柴山:持久力ってことですか。
武者:そっちが必要なんだなと思って。

●バカとシリアスと
武者:だけど、劇団のこれまでの歩みをふまえて、我々の共通認識で「ここは騒いで!」「ここは静かに」という切り替えて見せるべきものというのが、作・演の本田君が細かく説明しなくてもだんだんたぶん私たちの中でそれが揃ってきているから、そのための訓練というより共通認識で持って「はしゃぎ/静かになり」…みたいなのが切り替わってるのかなと思いました。
柴山:そのバランスがすっごくいいと思ったんですよ。笑いと涙の組み合わせは芝居においてよくあるんですけど、この作品はとてもバランスがいいと思いました。
原西:身内で言ってるのは、本田のことを「感動キャンセル癖」(笑)。
柴山:(笑)感動しそうになると…
原西:そこではしごを外す。
ばらぞの:(笑)風呂キャンは聞いたことあるけど…
赤羽:感動キャンセル界隈…(笑)
原西:いない人の話もアレですけど、彼自身は新潟の出身なので東北の物語を割と俯瞰できたり分析できたりするんですよね。たぶん東北で生まれて育っている人は東北の歴史をそのままやると、ホントに…澱みたいなものしか…。
赤羽:澱ってなんですか? それって東北弁じゃないですか?
一同:ちがーう!(笑)
原西:沈殿物。
柴山:何でも方言のせいにしちゃいかん(笑)。
原西:そこに距離があるというのは我々の作品に置いてアドバンテージがあると。この辺り(と出演者を指す)は東北で、新潟の彼が作・演なのは劇団にとってはいいバランスなのだと思いますね。

柴山:私にとっては、感動するシーンというのが会津固有の話ということではないんですね。別のものにリンクして。
出演者:嬉しい。
柴山:例えば、名前を呼んでいくシーン。あれは普遍的な、人類の、想いじゃないですか。白虎隊の悲劇とか戊辰戦争の話とか個別的な話がそれだけじゃないものに繋がっていく所が素晴らしいなと思った点です。笑いとのギャップでバランスがいいというのは「ここでの笑い/繋がっていく普遍的な感動」という点ですね。
赤羽:公演を作る時に本田とよく話すのが、ローカルなものを作っていますが、それを突き詰めていくと普遍性やグローバルに繋がって行くよねと。だから東北の話でありながら世界っていうのはあるのかもねという話をしてました。みなさんに聞きたいことがあって。先ほどますさんがジェットコースターと言ってましたが、「さっきまでやいのやいのと楽しんでいて、いきなり、俳優のテンションも含めてスッと静かになる」これは初めて見た時についてこれるのか、どうですか。
武長:確かに。
テツ:違和感はないですね。これが繰り返されて、演劇が始まる前の入場した時からそうでしたが、あの空間でいろんな感情を誘発してもらって観客もそこで鍛えられてるんじゃないかと。心の動きの準備体操がだんだん…最後のシーンでは動きやすくなった心が爆発しているんじゃないかと思います。僕は劇場を作る方なので、空間の作り方、空間演出の仕方も関係していると思いますね。ここらへん(後ろ)で声が聞こえるという…鑑賞ではなく体験ですね。
赤羽:それは嬉しい。今回のテーマでした、私の中で。鑑賞ではなく体験にするというのは。
ばらぞの:なんででしょう、円形だからでしょうか。
赤羽:劇場に足を運ぶ時って無自覚に緊張して開演を待つんですね、制限が多い空間…電源を切らなきゃいけない・静かにしなきゃいけない・帽子を脱がなきゃいけないなどがある中で見るのと、家でリラックスして見るのとは全然違う。確かに前説でキャストがそもそも居て、その緊張を受け止められる心と体の状態にするのはすごい大事なんだと今気がつかされました。
ます:始まった時しばらくバカなシーン(笑)で、昔、私がある人に聞いたのは「真面目な芝居こそバカなことをやれ」と。バカなことをやった方が結果的に芝居は…真面目な話で凝り固まった気持ちが笑いの方に膨れ上がるのは難しいから、最初に笑いがどーんと来て、すごい真面目なシーンが来た時に、ああこれはものすごいものを見ていると思いました。スッと音が消えて、一人だけ人が立って。
橋本:開演が19:30ですので…このタイミングで戻っていただいた方が…
――次の公演のため出演者の皆さんが帰られました
●他の劇場との比較
いちよ:私、MICHInoXは、「ミサイル」の時から永久招待チケットを持ってるから、昔クラウドファンディングがあって10万円で永久招待チケットが買えたんですね。
ばらぞの:お得じゃないですか…!
いちよ:そうなんです。元が取れないと言って買うのを断念した話も聞くんですけど、私は十分元とってるので。何回も見に行っても利益にならないからとちょっと気にしてるんですけど。
ばらぞの:いいんじゃないですか、あんなにバッジも買ってるし。
いちよ:仙台でやった時は地面の上についていたので出演者が飛び跳ねても床が振動しなかったのが劇場的に違うことだなと思いました。仙台の10-BOX(せんだい演劇工房10-BOX)で。今日のは役者が飛び跳ねると振動したじゃないですか。
数人:振動した? 全然わからなかった…。
いちよ:あれが全然なかったんですよ。
柴山:では最初におっしゃってた違いという点はそれですか?
いちよ:劇場の話を聞いて、それを感じました。地面の上についてるのと空中では違うんだなと。
テツ:違うと思います。
柴山:では先ほどおっしゃった違いというのを教えてもらえますか。
いちよ:会津の物産紹介の時わざと訛ってました。
柴山:固いヨーグルトって何でしょう。
一同:(わいわいとあれこれと)。世界大会があるってね。
ゆみこ:本田さんが私の後ろを歩いている時ずっとあれを振っている音が、カシャッカシャッて(笑)。
ばらぞの:会津の雪ソフトクリーミーヨーグルトらしい。「飲みにくいヨーグルト早飲み世界大会で二連覇したが記録は大幅ダウン」と記事が(笑)。濃くて美味しいんかな。
ゆみこ:違う場所で作品を見る…私も割と追っかけなので、客席が違うんです。今回は大阪で見る予定ですけど、過去のパターンで同じ作品だし同じようにやっているのに受け止める会場側が全然違うんです。MICHInoXのように東北の話を東北でやってる時と…
柴山:お客さんの理解度も違いますよね? 先ほどの動きの話でも聞きたかったんですけど、あの動きに対して狭いじゃないですか、他はどうなんでしょう?
いちよ:10-BOXよりぽんプラザの方が広いって言ってましたし、大阪と東京では四方を囲まずに対面式でやるそうです。
橋本:最初は円形でと言ってましたしたけど途中から対面に変わりましたという案内が出てます。
柴山:囲み、良かったなぁ。
橋本:ぜいたくでしたね。
柴山:上手いと思ったんですよ、囲みと言いながらどこか一面が正面になるって芝居が多いですよね。でも非常にうまく…
ばらぞの:私も昨日と今日と対面になる角度の席で見たけどどっちも良かったです。こっちも行ける!と。
いちよ:ラストシーン、前から見た人が後ろからも見たいとリピーター獲得にもつながっているらしいです。
柴山:あのシーンは後ろでも絵になるんですよね。この作品はどこからも見れるのは良かったし、そう作られていると思いました。
ます:4か所の出入り口があるおかげで、そこに向かって演技するとどっからでもちゃんと見えるような構造になっているのかなと。
柴山:先ほど赤羽さんが「振り幅が大きいから付いていけましたか」と訊かれてましたが、私実は赤べこに乗って回りながらの会話のシーンでセリフが全然耳に入って来なくて。それは赤べこも客席に向かって話すのでそれを必死で聞いてしまってメインのセリフが聞けない(笑)。めっちゃ目が合うもんだから(笑)。
橋本:柴山さんの隣だったんですけど、めっちゃ柴山さん見られてて柴山さん目掛けて話してましたね(笑)。
柴山:だから肝心なものは聞けなかったかも(笑)。あと、どうでもいい話していい? ベこが2人並んでその上に人間が1人乗っている時に、お尻をパンパン叩くときに、右の人だけが叩かれるんですよ、あれ時々交代してあげて~と思いながら(笑)。
いちよ:叩かれた方は離脱して死んじゃった方ですか。死んじゃったほうなら叩かれても筋が通る。
ゆみこ:前作の『TSUNEKIYO』の時の馬の方が過酷な感じでしたね。今回はベこなので動きが激しくない。特にいい馬がいる土地の馬だから、能力が高くないといけないからめっちゃ運動量がすごくて(笑)。
テツ:並の運動量じゃないですよね。
ます:つくづく芝居は役者の肉体だなと。
一同:(笑)うんうん。
ばらぞの:バカなことをする劇団はあるけど、シリアスに行く体力がないと思うんですよ。
柴山:先ほどばらぞのさんが言ったようにはぁはぁ息を切らしながら真面目なシーンはできないですもんね。
ばらぞの:そうなんですよ。でもここまでやんないと芝居は面白くならないんだと、反省しましたよ(笑)。いっつもちょっとのシーンで次の日寝こむし千穐楽の次の日は一日寝ると決めてるし(笑)。
一同:(笑)。
――ここから役者の年齢の話に移りました(省略)
●印象に残ったセリフなど
柴山:私、「勝った者には勝った者の責任がある」という言葉が…
ゆみこ:それねー、素敵なセリフだなと思った…
柴山:うん、その覚悟や責任がない人間が後を制していくから問題なのよね、と。
ゆみこ:勝者がその気持ちを持っていてくれたら違うのになぁと。
いちよ:降伏文で声をつぶしてしまうという話がありましたけど、その後に「文官さんはこれだから」っていうセリフで、文章なんかで人の思いは切り取られないんだよというところが私はハッとする。
ゆみこ:セリフの中で言うと、「なんでか知らんけどあいつら責めてくるんだよ」っていのが。見ている時に「なんでなんだろう」と思っていたけど今日の話でああなるほどと…
ばらぞの:搾取される…ね。
柴山:数日前の新聞にノンフィクションライターへのインタビュー記事があって、都庁でプロジェクションマッピングがやられている、キラキラピカピカを見るたびにその電気はどこから作られているのか送電されているのかと思う…と書かれていて。私も同じこと思います。先ほどゆみこさんが原発のことをちらっとおっしゃいましたけど、現在も電気の供給地になっている。そんなことも重ねて、今でも続いているのかと思った時に、この作品自体も一つの「おきがき」なのかなと…思いました。
いちよ:九州の人は、クマソの時代にヤマトタケルに侵略された感じとか資源を持っていかれるという感じを一切受けていないんでしょうか。
柴山:時代が経ちすぎているということと…搾取って点で言えば、福岡(市)でない所はひょっとしたら感じているかもしれませんね。熊本は、明治時代まで鎮台が置かれてたとか九州財務局が置かれてたとかで、それらは福岡にはなかったですから対抗意識は強かったと思いますけど、現在は明らかに人口や経済規模が違うので…だから九州においては福岡の一人勝ちみたいなところがありますよね。
ます:九州で言えば鹿児島は全然文化が違いますよね、ずっと雌伏をしていたところなので結果的には官軍にはなりましたけどその前は会津と同じように歩調を合わせて戦ったと、あそこが違ったのは海があったから海外と交流ができたし琉球を攻めることができたという…
柴山:話は尽きませんが時間が来てしまいました。最後に一言ずつ何かありますか?
テツ:若い人に見てほしいですね。
ます:東北のテーマということで私は反応しましたが、それを除いてもエンターテイメントとして完成度が高い芝居だ思います。
いちよ:大阪・東京での対面でも楽しめると思いますので!
ゆみこ:この場を作っていただいたことが、やっぱりいいなと。友達と話したりはしますけど、いろんな方の意見やその人の経験が組み合わせると自分だけが思いつかなかったことを聞けて、良かったです。
柴山:今日もありがとうございました。

