2025年3月2日(日)@カフェオットー.シクロ
対象作品:『いきなりベッドシーン』柿喰う客 出演:七味まゆ味 作・演出:中屋敷法仁
*2016年から福岡、小倉、久留米などにおいて不定期に「シアターカフェ」を開催してきた。シアターカフェとは、観劇した後に有志の観客(10名程度)でお茶を飲みながら、見たばかりの作品について語るというものだ。作品の役者・劇作家・演出家が参加してくれることも多く、毎回かなりの盛り上がりを見せる。
福岡で毎年行われている「キビるフェス」では「キビるカフェ」と名称を変更して実施している。今回はキビるフェス2025の演劇作品第一弾、『いきなりベッドシーン(キビるスペシャル)』が対象作品。2008年に初演、2010年に再演するも、内容の過激さゆえに再演の機会を封じられていた…という衝撃的な作品である。
この作品を語らずには帰れないと集まったのは12名。年齢も、「柿喰う客」観劇歴も、舞台関係者か否かの立場も違う人々が狭いカフェに一堂に会した。注文の品が届き始めたころに、出演した七味まゆ味さんが登場。場を温めてからのお迎え…とならず失礼したけれど、七味さん、さっきまでの強烈な「鷲津神ヒカル」を演じたとは思えない可愛さである。雰囲気が全然違ってさすが女優さん。七味さんがかぶっていた帽子を誰かがほめると「これ、リバーシブルなんですよ!(と裏返して見せる)でもズボンがこんな(柄物)だからおとなしめに無地の方でかぶってます!」とニコニコと帽子をとって見せてくれた。
ではここから、キビるカフェでのみんなの感想をランダムに紹介していこう。

●柿喰う客、俳優、劇作について
「昨日のアフタートークで本作はハッピーエンドなのかバッドエンドなのかという質問があったけれど…」七味「悲劇だからこそ悲劇にしたくないと思って」
「劇的な出来事過ぎて…しんどすぎる。グロすぎる。なのに演じている人が可愛くてパワフルで」
「うん、柿の俳優(柿喰う客の俳優)ってパワーある!」
「妙な爽快感があるから、見届けてしまうんだよね」
「重い(深刻な)シーンで『鷲津神』さんがシルエットになって、顔が見えなくてホッとした」
「そのおかげで客観的に観ることができた」
――アフタートークで明らかになったのだが、劇場によって少しだけ動きも変わる。今回のぽんプラザホール公演では、七味さんがペットボトルのお水を飲みにいったり、壁のスイッチをオフにして明かりを消したり、客席の階段を駆け上がったりしたが、それも七味さんの自由裁量(?)でこのホールだからの動きだったそうだ。
七味「でもお水を途中で飲む方が疲れるんですけどね」
「役者が苦しんでいるのが好きなので…劇団の制作をしていて、俳優が苦しんでいるほど作品が面白くなることを知っているので」
「確かに、自分が好きなバンドでも苦しめば苦しむほどいい作品が生まれるって言ってた…!」
七味「福岡は客席が遠い感じがする。今日はできるだけ落ちついていこうと思ってやりました。今日は引いてるなという感じで。笑いも納得した笑いって感じなのかな」
「…やりづらかったのでしょうか?(そう言われて首をふる七味さん)引いていたのではなく、圧倒されちゃったのではないかなと思います!」
●内容について
「『まごころさん』は、鷲津神さんが作り出したもう一人の自分だったのではないかと思う」
「なるほど! (ポジティブに語る彼女だけれど)あまりにつらい状況の中、心で逃げの場を作ってイマジナリーフレンドの『まごころさん』ということか…!」
「こんなヘビーな作品やっていて疲れないんですか?」七味「疲れるけど…突き進みたいと」
「ラストシーンの鷲津神さんの顔が…呆然としてもう折れてしまって抜けたような顔が忘れられなくて」
「私は逆にキリっと見えて…とんでもない目に遭いながらポジティブな言葉を発していた彼女の最後の矜持というか、そんな顔に見えた。せめてそうあってほしいという私の願望かもしれないですね」

●感想
短い時間、そして席が二手に分かれ話しにくかったのだが…(思ったより参加者が多かったのです…)。まず参加者が本作に満足していたこと、そのたぎる熱い想いを口にしたくてたまらなかったこと(それも演じた七味さんを目の前にして!)もあって途切れることなくあれこれと言葉が飛び交った。七味さんはその度に「ほんとですか! ありがとうございます」とにこやかに言い、さらに色々と説明や感想を述べていく。サービス精神が旺盛とも言えるけれど、それよりも参加者と話せることが楽しいと思っているように見えて…そりゃ、ファンになっちゃうわ。
柿喰う客を全く見たこともなく知らなかった誰かの一言。「前情報なしに見たのでかなり驚いたけど…見て良かったと、思います」、この一言が全てを表わしている。そしてどんな人か知らなかったけれど…七味さんとお話できて良かった、参加者みなそう思って帰途に就いたに違いない。